今回は電子商取引の普及と働き方改革が所得税実務に与える影響について、近年よくみる副業収入例をご説明します。
はじめに
近年よくみる副業収入
多くの給与所得者(サラリーマンやパートタイマーなど)は, 給与の支払者(勤務先)が行う年末調整によって源泉徴収された所得税額と納付すべき所得税額との過不足が精算されるため、一般的に確定申告の必要はありません。
しかし給与所得者でも、その給与所得以外に副業収入等によって20万円を超える所得を得ている場合には確定申告が必要となります。
給与所得者の副業収入としては、以下の3つが多くを占めていました。
- インターネットのオークションサイトやフリーマーケットアプリなどを利用した個人取引による所得
- ビットコインをはじめとする暗号資産の売却等による所得
- 民泊による所得など
しかし近年、多くの企業がその従業員に対して副業や兼業を推奨した結果、給与所得以外の収入を得る人が増え、その所得稼得形態の多様化が進みました。
このことは学生生活を送るうえで学費または生活費を補うために、コンビニ・飲食店・学習塾などのアルバイト先から雇用契約に基づく給与所得を得ていた大学生についても同様です。
今日のソーシャルメディアを介した個人間の単発または短期な業務委託には、Uber Eats配達パートナー等のフードデリバリーサービスの配達員をはじめ、クラウドワークスやココナラなど個人のスキルを提供(シェア)するサービスが挙げられます。
このほかAmazonなどのプラットフォーム上で展開するネット通販や近時では自己が制作したデジタルアートを紐付けた「NFT」を組成し販売する形のインターネットビジネスなどから稼得する学生も少なくありません。
NFTの基盤は、ブロックチェーン技術の手法を取り、ブロックチェーンを維持管理するための作業はマイニングと呼ばれ、その作業報酬がビットコイン(BTC)でやり取りされます。
ビットコインは, 匿名で利用できる資金の移動手段という点が注目された結果、投機・投資の対象となりました。
ビットコインの売買は暗号資産取引の一つで、近年では分散型金融(DeFi)の発達によって暗号資産の貸付を行い、賃貸収入を得るなど取引は多様化しており、 現行法上DeFiの取引から生じた所得も雑所得に区分して申告します。
このほかスマートフォンにアプリケーションをダウンロードしてプレイできるブロックチェーンゲームには、NFTに紐付くゲーム内アイテムが高額で取引される事例も出てきました。
次回、NFTによる取引例を提示しながら、所得税法上の取扱いに関してご説明します。